広島の財務コンサルが解説|社員の給料を上げたい経営者へ。「いくらまでなら大丈夫?」を数字で考える方法

2026.10.03

「頑張ってくれている社員の給料を、もっと上げたい」

経営者の方と話をしていると、こうした思いを聞くことがあります。

会社を支えてくれている社員には、できるだけ還元したい。

物価も上がっているし、生活も楽ではない。

長く働いてもらいたい。

採用競争を考えても、待遇を良くしていきたい。

何より、会社が成長した分を社員にも実感してほしい。

私は、こうした思いを持っている経営者の方は非常に多いと感じています。

ただ、その一方でこんな不安も出てきます。

「基本給を上げて、本当に払い続けられるだろうか?」

「今期は利益が出ているけれど、来年売上が落ちたらどうしよう」

「賞与で還元するのと、月給を上げるのはどちらがいいのだろう」

「社員全員を1万円昇給すると、会社にはどれくらいの負担になる?」

「そもそも、うちの会社はいくらまで人件費を増やせるのか?」

ここで難しいのは、給与は一度上げれば基本的にその後も継続して発生するということです。

今月だけ払えればいいわけではありません。

来月も、半年後も、来年も支払っていかなければならない。

だからこそ、

「利益が出たから上げよう」

「最近売上が伸びているから大丈夫だろう」

という感覚だけで決めるのは少し怖いところがあります。

一方で、

「人件費が増えるのが怖いから、できるだけ給与は上げない」

という経営も、私は違うと思っています。

社員への還元は会社の未来をつくる大切な投資でもあるからです。

では、どう考えるのか。

大切なのは、

「給与を上げられるか分からない」を、「この数字なら上げられる」に変えること。

広島で財務コンサルを探している経営者の方にもぜひ知っていただきたい、財務と給与の関係について今回はお話しします。

給料を月1万円上げると、会社の負担はいくら増える?

たとえば、社員10人の会社があるとします。

経営者が、

「みんな頑張ってくれているから、来期から一人1万円ずつ基本給を上げたい」

と考えました。

単純計算すると、

1万円×10人=毎月10万円。

年間では、

10万円×12か月=120万円。

ここだけを見ると、

「年間120万円なら何とかなるかな」

と感じるかもしれません。

しかし、会社側の負担は単純な給与額だけではありません。

給与が上がれば、条件に応じて会社負担の社会保険料などにも影響します。

賞与を基本給などに連動させている会社なら、賞与への影響も考える必要があります。

つまり、

社員に支払う給与の増加額と、会社全体の人件費増加額は必ずしも同じではありません。

だから昇給を検討するときには、

「社員一人あたり月1万円」

だけを見るのではなく、

「会社全体では年間いくら固定費が増えるのか」

まで確認する必要があります。

この「年間」で見ることが大切です。

毎月数万円の差だと小さく感じても、社員数を掛け、12か月分にすると経営への影響は大きくなります。

給与は「固定費」だからこそ慎重に考える

給与を考えるうえで、もう一つ重要なのが固定費という考え方です。

売上に応じて増減しやすい仕入れや外注費などとは違い、人件費は売上が落ちたからといって翌月すぐに減らせるものではありません。

売上が好調な月も。

少し落ちた月も。

繁忙期も。

閑散期も。

給与の支払いは続きます。

つまり昇給するということは、

会社が将来にわたって負担する固定費を増やす意思決定

でもあります。

だから私は、

「今払えるか」

だけではなく、

「今後も払い続けられるか」

という視点で考えることが大切だと思っています。

今期だけ大きな案件が入って利益が出た。

だから給与を大幅に上げる。

翌年、その案件がなくなった。

しかし人件費は元には戻らない。

そうなれば、経営者は苦しくなります。

だからこそ、一時的な好業績なのか、会社の収益力そのものが上がっているのかを見極める必要があります。

「売上が増えたから昇給できる」とは限らない

ここで注意したいのが売上です。

たとえば前年より売上が2,000万円増えた会社があったとします。

経営者としては、

「2,000万円も増えたのだから、社員に還元しよう」

と考えたくなります。

もちろん、それ自体は素晴らしいことです。

ただし、見るべきなのは売上だけではありません。

重要なのは粗利です。

売上が2,000万円増えていても、そのために仕入れや外注費などが1,800万円増えていたら、増えた粗利は200万円です。

反対に、売上の増加が1,000万円だったとしても、粗利率の高い事業で800万円の粗利が増えているなら、人件費に使える余力はこちらの方が大きい可能性があります。

つまり、

「どれだけ売ったか」より「会社にどれだけ粗利が残ったか」

を見る必要があります。

これは、前回お話しした採用の考え方と同じです。

人件費は粗利から支払われます。

だから社員への還元を考えるときも、売上ではなく粗利との関係を見ることが重要です。

労働分配率という考え方

社員への給与を考えるときに参考になる数字の一つが「労働分配率」です。

簡単に言えば、会社が生み出した付加価値のうち、どの程度を人件費として分配しているかを見る考え方です。

ただし、ここで注意したいことがあります。

インターネットで検索すると、

「適正な労働分配率は○%」

といった数字が出てきます。

こうした数字は参考になりますが、

その数字だけで自社の給与が高い・低いを判断するべきではありません。

業種によって違います。

会社の成長段階によっても違います。

設備を多く必要とする会社と、人が中心となって価値を生み出す会社でも違います。

だから、

「平均が○%だから、うちも○%にする」

ではなく、

自社では現在どれくらいなのか。

過去と比較してどう変化しているのか。

今後どの程度の粗利をつくる予定なのか。

その中で、どれくらい社員に還元していきたいのか。

こうした視点で見ることが重要です。

数字は「答え」ではありません。

経営者が意思決定するための材料です。

「社員にもっと払いたい」から売上目標を逆算する

ここからが、私が財務で非常に大切だと思っている考え方です。

多くの会社では、まず売上目標を決めます。

「今年は1億円だったから、来年は1億1,000万円にしよう」

「前年比110%を目指そう」

そして、その売上の中から人件費を考えます。

もちろん、これも一つの方法です。

ただ、逆から考えることもできます。

たとえば経営者が、

「来年は社員全員の給与を上げたい」

と思っているとします。

年間で会社全体の人件費を300万円増やしたい。

さらに一人採用したい。

賞与も増やしたい。

会社には一定の利益も残したい。

借入返済もある。

では、それらを実現するには粗利がいくら必要なのか。

そして、その粗利をつくるには売上がいくら必要なのか。

こうして逆算していきます。

すると、

「来年は売上1億1,000万円」

ではなく、

「社員にこれだけ還元し、会社にもこれだけお金を残すために、売上1億1,000万円が必要」

という目標になります。

同じ1億1,000万円でも、意味がまったく違います。

数字に目的が生まれるからです。

社員から見た「売上1億円」と社長から見た「売上1億円」は違う

経営者と社員の間で、お金に対する認識がズレることがあります。

たとえば社員が、

「会社の売上が1億円ある」

と聞いたとします。

会社のお金の仕組みを知らなければ、

「1億円も売上があるなら、もっと給与を上げられるんじゃないか」

と思っても不思議ではありません。

しかし経営者からすると、

「いや、1億円全部が会社に残るわけではない」

となります。

仕入れがあります。

外注費があります。

給与があります。

家賃があります。

広告費があります。

社会保険料があります。

その他の経費があります。

税金もあります。

借入金の返済もあります。

それらを支払って、ようやく会社にお金が残ります。

この構造を知らなければ、

経営者は、

「こんなに会社は大変なのに」

と思い、

社員は、

「こんなに売上があるのに」

と思う。

お互い悪気がないのに、認識がズレてしまいます。

だから篠永コンサルティングオフィスでは、必要に応じて社員にも会社のお金の流れを分かりやすく共有することを大切にしています。

お金のブロックパズルは社員への説明にも使える

ここで役立つのが「お金のブロックパズル」です。

難しい決算書を社員全員に配り、

「これを読んでください」

と言っても、なかなか伝わりません。

そこで会社のお金をシンプルな流れとして考えます。

売上。

そこから変動費。

そして粗利。

粗利から人件費やその他の固定費。

そして利益。

さらに税金や借入返済などを考え、会社に現金が残る。

この流れが分かるだけでも、

「売上=会社が自由に使えるお金ではない」

ことが理解しやすくなります。

さらに、

「今の粗利だと人件費はこれくらい」

「この売上・粗利まで増えれば、ここまで社員に還元できる」

と説明できればどうでしょう。

給与についての話が、

「社長が上げてくれるかどうか」

だけではなく、

「みんなでこの数字をつくれば、自分たちへの還元も増やせる」

という話になります。

私は、会社のお金を社員と共有する価値はここにあると思っています。

もちろん、すべての数字を無条件に公開すればいいという話ではありません。

会社によって共有する範囲は違います。

ただ、少なくとも、

「会社のお金はどういう構造になっているのか」

を社員が理解することで、会社の目標に対する見え方は変わります。

給与を上げることは「社員の生活」を変えること

財務の話をしていると、どうしても数字中心になります。

人件費率。

粗利。

固定費。

利益。

キャッシュフロー。

もちろん、すべて重要です。

ただ、給与は単なる経費ではありません。

その先には社員の生活があります。

毎月1万円給与が増えれば、年間では12万円です。

その12万円によって、

家族との外食が増えるかもしれない。

子どもの習い事に使えるかもしれない。

旅行に行けるかもしれない。

貯金できる金額が増えるかもしれない。

将来への不安が少し減るかもしれない。

だから経営者が、

「社員にもっと還元したい」

と思う気持ちは、私はとても大切だと思っています。

同時に、会社が無理をして給与を上げ、数年後に経営が苦しくなれば、結果的に社員を守れません。

だからこそ、

気持ちだけでもなく、数字だけでもない。

両方を見る必要があります。

社員に還元したいという経営者の思いを、持続可能な数字に変える。

これも財務コンサルの役割の一つだと考えています。

基本給だけでなく「賞与」という選択肢も考える

社員への還元方法は、基本給を上げることだけではありません。

賞与として還元する方法もあります。

もちろん、どちらが良いかは会社によって異なります。

基本給を上げれば、社員にとって毎月の収入が増えます。

安心感にもつながります。

一方で会社にとっては、継続的な固定費が増えます。

賞与であれば、会社の業績などに応じて還元する設計も考えられます。

だから、

「社員に年間30万円多く還元したい」

と考えたとき、

すべて月給に乗せるのか。

一部を月給にして、一部を賞与にするのか。

業績に連動した仕組みにするのか。

さまざまな考え方があります。

大切なのは、

会社のキャッシュフローと、経営者が社員にどう報いたいかを両方見ながら決めること

です。

なお、実際の賃金制度や賞与制度の設計・変更については、労務上のルールや就業規則なども関係するため、必要に応じて社会保険労務士などの専門家と連携して進めることが重要です。

財務の側から見るのは、

「会社として、どこまで負担できるのか」

という部分です。

「給与を上げるために利益を出す」という考え方

利益という言葉に対して、

「会社や社長のために残すお金」

というイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかし、利益は会社を継続し、社員を守り、未来に投資するために必要なものです。

利益があるから、

会社に現金を残せる。

借入を返済できる。

設備投資ができる。

採用できる。

そして、社員にも還元できます。

つまり、

社員の給与を継続的に上げていくためにも、会社はきちんと利益を出す必要があります。

ここを経営者だけでなく社員にも理解してもらえると、利益に対する考え方が変わるかもしれません。

「会社だけが儲けるための利益」

ではなく、

「自分たちの未来を良くするために必要な利益」

になるからです。

だから私は、

「利益を出しましょう」

で終わるのではなく、

「その利益を何のために出すのか」

まで考えることが大切だと思っています。

会社にお金を残すことと社員に還元することは対立しない

「会社にお金を残したい」

「社員に還元したい」

この二つは、対立するもののように見えることがあります。

会社に残せば社員への還元が減る。

社員に還元すれば会社のお金が減る。

確かに短期的に見れば、そういう側面もあります。

しかし、本来はどちらも必要です。

会社に十分な手元資金があれば、売上が一時的に落ちても給与を支払えます。

設備が突然故障しても対応できます。

大きな取引先を失っても、立て直す時間を確保できます。

つまり会社にお金を残すことは、

社員の雇用を守ること

にもつながっています。

一方で、会社にお金を貯めることだけを優先し、社員への還元をずっと後回しにすれば、人材が定着しない可能性もあります。

だから、

会社にいくら残すのか。

社員にいくら還元するのか。

未来への投資にいくら使うのか。

このバランスを考える必要があります。

ここでもキャッシュフローが役立ちます。

「今年払える」ではなく「3年後も払える」を考える

給与について考えるとき、私はできるだけ未来まで見てほしいと思っています。

今期の利益が良い。

だから昇給する。

もちろん、それが問題ないケースもあります。

ただ、

来期の売上計画はどうなのか。

採用予定はあるのか。

設備投資はあるのか。

借入返済はいくら残っているのか。

今後大きな納税はないか。

会社として必要な手元資金はいくらか。

こうした未来のお金まで見て、

「この昇給なら今後も維持できる」

と判断できれば、経営者も安心して社員に還元できます。

社員にとっても、上がった給与が会社の負担になっている状態より、会社の成長とともに持続的に待遇が改善していく方が安心です。

だから財務では、現在の数字だけではなく未来の数字を見ることが重要なのです。

経営者自身の役員報酬も同じように考える

給与の話は社員だけではありません。

中小企業では、経営者自身の役員報酬について悩まれている方も多いと思います。

「自分はいくら取っていいのか」

「会社に残した方がいいのか」

「家族の生活を考えると、もう少し増やしたい」

経営者にも生活があります。

家族もいます。

将来実現したいこともあります。

だから、

「社長はできるだけ報酬を取らず、会社に残せばいい」

という単純な話ではありません。

篠永コンサルティングオフィスでは、会社のビジョンだけでなく、経営者自身や家族のビジョンも大切にしています。

会社を成長させることによって、

自分はどんな人生を送りたいのか。

家族とどんな時間を過ごしたいのか。

何歳までどんな働き方をしたいのか。

そこにもお金は関係します。

もちろん、役員報酬には税務上・社会保険上の論点もあるため、具体的な設定や変更は税理士などの専門家と相談する必要があります。

ただ財務の視点からは、

会社と経営者の双方が無理なく続けられる状態を考える

ことが大切です。

広島で財務コンサルを探している経営者へ

「社員の給与を上げたい」

そう思ったときに、

「でも怖いからやめておこう」

で終わらせる必要はありません。

逆に、

「今年儲かったから上げよう」

と感覚だけで決める必要もありません。

まず数字にしてみることです。

社員一人あたりいくら上げたいのか。

会社全体では年間いくら人件費が増えるのか。

社会保険料などを含めると負担はどう変わるのか。

現在の粗利はいくらか。

必要な利益はいくらか。

借入返済はいくらあるのか。

会社にいくら現金を残したいのか。

そして、そのすべてを実現するには粗利がいくら必要なのか。

必要な粗利から、売上目標を逆算する。

そうすれば、

「給料を上げたいけれど大丈夫かな」

という不安が、

「この数字を達成できれば、来年はここまで上げられる」

という目標に変わります。

「社員に還元したい」を会社の成長エネルギーに変える

私は、社員に還元したいという経営者の思いは、会社にとって大きな力になると思っています。

「社員の給与を上げたい」

だから利益を増やす。

利益を増やすために粗利を増やす。

粗利を増やすために売上や粗利率を改善する。

そのために、会社として何をすべきか考える。

こうしていけば、

社員への還元そのものが、会社の経営目標になる

からです。

売上目標も、

「前年より10%伸ばす」

だけではなくなります。

社員にこれだけ還元したい。

新しい仲間を一人増やしたい。

会社にはこれだけ現金を残したい。

設備にも投資したい。

借入も計画的に返したい。

その未来を全部実現するために、

「今年はこの売上、この粗利を目指す」

となる。

私は、この順番でつくられた数字には力があると思っています。

なぜなら、その数字の向こう側に「人」がいるからです。

財務は、数字を良くするためだけにあるものではありません。

数字を使って、会社やそこで働く人たちの未来を良くしていくためにあります。

篠永コンサルティングオフィスが目指しているのも、単に決算書を分析して「人件費が高い」「利益率が低い」と指摘する財務コンサルではありません。

会社のお金を分かりやすく見える化し、

経営者が、

「社員にもっと還元したい」

「人を採用したい」

「設備投資したい」

「会社を成長させたい」

と思ったときに、

「どうすればそれを実現できるか」を一緒に数字で考える。

そして、経営者が自信を持って意思決定できる状態をつくる。

広島で財務コンサルを探している経営者の方で、

「社員にもっと還元したい。でも、どこまでなら会社として大丈夫なのか分からない」

と感じているのであれば、一度、自社のお金の流れを整理してみてください。

給与を「経費」として見るだけではなく、

会社が実現したい未来から逆算して考えてみる。

すると、

「人件費をいくらに抑えるか」

という話から、

「社員と会社が一緒に豊かになるには、どんな数字をつくればいいのか」

という話に変わります。

会社にもお金を残す。

未来にも投資する。

そして、会社を支えてくれている社員にもきちんと還元する。

そのバランスを感覚ではなく数字で考えられるようにすること。

それも、篠永コンサルティングオフィスが財務コンサルとして大切にしている経営支援の一つです。

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